晴れた土曜日、上向いて

理由ばっかり尋ねる世界でワケなど一つも無く。

事前情報全くゼロで万引き家族を見た女の感想

万引き家族、見た。

ネタバレあるかも。

 

別に、泣かなかった。というより、泣けなかった。ただ、苦しい。切なくて、ある意味羨ましくて、悲しい。

絆とか、家族ってなんだろう。と思った。自分って恵まれてんのかな、と思った。名前が2つある人生じゃなくてよかったんだろうな、と思った。

でも、恵まれてるって、なんだろう、とも思った。人に恵まれ、環境に恵まれ、運に恵まれ、今ここでこの家族のことを他人事として見てる。

現実って辛いな、と思った。何が起こるか誰にも分からない。でも、現実って捨てたもんじゃないな、とも思った。辛いことはあったけど、確実にあの家族のおかげで、リンは助かった。

 

あの中で、ほとんど誰も泣かなかった。現実って泣いてばかりじゃいられなかった。

みんな生きるために必死だった。何が起こるか分からないから。みんなおばあちゃんのこと大好きだったのに、お葬式ができなかったのは残された自分が生きていかなきゃいけなかったから。死体遺棄、そんな簡単な言葉で説明できるような行為では無い。誰かが捨てたのを、拾った。埋めたのは。おばあちゃんが、おばあちゃんであることを捨てた時、5人が拾った。お金はお金。ありがたく頂戴する。だって死んだ時、おばあちゃんはおばあちゃんじゃなくなった。こういうのはしょうがない、順番にくるんだから。

 

無料で拾ってきた子たちは、あの6人の中で幸せそうだった。生きていくことの難しさと、生きていくことの楽しさと、人の愛情を知った子どもは、強くなった。幸せとは何かを知った。家族の意味を探し始めた。

誘拐したわけじゃない。誰のものでもなかったから、連れてきた。その持ち主が、困らなさそうだと思ったから拾ってきた。

世間は、その6人しか知らない世界を見てないくせに、血の繋がった世界に戻したがる。感情で繋がったつながりじゃなくて、他の人からも理解しやすい環境に戻したがる。親は子供を選べないし、子供も親を選べないけど、その誰もが生きる環境を選ぶ権利はあるはずなのに、大多数がまともだと分かりやすい環境を子供に押し付ける。

 

まとも、ってなんだよ。みんなそれぞれ生きてるのに、なんで部外者が理解しようとするのかな。これだけは分かる。リンは絶対に6人でいた時が一番幸せそうな顔してた。

 

深いことは全然わからなかった。

けど、みんなが、家族であろうとした。みんな、どっかから万引きされてきた人たちかもしれない。だけど、それでよかった。

子供の歯が抜けた時、男の子が男子になろうとした時、遊びに行く服を買った時、血が繋がっただけの家族なんかよりよっぽど、そこには絆があった。

帰れば誰かが待っててくれて、一緒に冬も夏も感じてくれる人がいて、一つの鍋囲んで、誰がどう見ても、家族だった。

以上でも以下でもない。家族であろうとしながら、毎日を懸命に生きてたのに。ただ、法で繋がった家族じゃないから、病院に迎えにいけなかった。

しょうたは、このままじゃいけない、と思った。世間の正解が気になってしまった。わざと捕まった。妹に、大事な妹に、万引きさせてる家族は良くないことだと思った。

車上荒らししてる父親を見て、こんなことじゃいけないと思った。

 

本当の家族ってなんだろう。本当の父親ってなんだ。本当の母親ってなんだ。一緒に海で楽しく遊べてたら、一緒に生活して、ご飯食べて、愛情を注げることが出来れば、それはもう家族なんじゃないのかな。損得勘定無しに、想い合う関係なら、家族じゃないのかな。

リンは、強くなった。でも、血の繋がった両親のもとで、果たして幸せに生きていけたのかな。6人でいた時、絶対に1人じゃなかった。お兄ちゃんがいたし、おばあちゃんもいた。

たくさんの人に囲まれて愛情を受ける権利を、

血が繋がってないからってその環境をリンから奪い取る権利なんてだれも持ってないはずなのに。警察は誰を守る仕事をしてるんだろう。

おばあちゃんのお葬式を、リンが生活する環境を自分で選べる権利の主張を、しょうたが学校に行ける支援を、この6人が万引きしなくてすむような社会を、現実では誰が、助けてくれるんだろう。

 

フィクションだったけど、現実だった。

普通の顔して近所の商店街を歩く親子は、血が繋がってないかもしれないし、毎日を生きることに精一杯かもしれない。こんな世界が、ずっと自分の人生の真横を、出番が今か今かと待ちながら平行して歩いてる。

本当の家族ってなにか、絆ってなんなのか、出会ってみないと分からないこともあるよなあ、と、思った。